緩和ケアに関する質問
- 緩和ケアの対象となる疾患は、がん以外にどんなものがありますか?
-
世界保健機関(WHO)の定義では、後天性免疫不全症候群(AIDS)、慢性心不全、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、根治不能な神経疾患(例えばALS)、認知症、肝不全、その他の難病など、進行性で重篤な疾患全般が含まれます。ただし、日本でホスピスや緩和ケア病棟を利用するときには、保険診療上の制約から悪性腫瘍(がん)やAIDSの患者が対象となり、その他の疾患での利用は困難です。現状では、がん以外の疾患については十分な緩和ケアが提供されているとは言い難いです。しかし今後、がん以外の疾患に対する緩和ケアを充実させていこうとする動きはあります。
- がんと診断され、これから治療をしようというときに、主治医から緩和ケアを勧められました。
それは病気が治らず、末期であることを意味しているのでしょうか? -
いいえ。日本では「がん対策基本法」に基づき、がんの診断時から全ての患者さんとご家族に緩和ケアを提供することを推奨しています。そのため、これから治療を開始するときに緩和ケアを勧められた場合、それが直ちに病気が治らないことや末期を意味するとは限りません。がんの診断直後、あるいは治療中から緩和ケアを勧める主治医は、今後の治療や療養に関して、患者さんとご家族をサポートする緩和ケアが必要だと考えているのでしょう。主治医から緩和ケアを勧められたら、それはどういうことなのか一度確認してみることをお勧めします。
- 緩和ケアを受けたいのですが、どうすればいいですか?
-
まずは、あなたの主治医や担当医、担当看護師などに、あなたの思いを伝えてみてください。どういうことに困っていて緩和ケアを受けたいと思うのか、それを伝えることで、すぐに対応してもらえることもあります。緩和ケアは特別な医療ではありません。患者さんの話をよく聞くこと、身体や心の苦痛をできるだけ和らげようとすること、それは医療の基本であり、すべての診療科で程度の違いはあるにせよ、基本的な緩和ケアは提供されます。ただし、基本的な緩和ケアだけでは対応が難しい場合、専門的な緩和ケアを提供してくれる部門や職種、チームなどへ紹介してもらえるように、あなたを担当している医師や看護師に相談してください。
- 緩和ケアは、どこで受けられますか?
-
病院だけでなく、さまざまな場所で緩和ケアを受けることができます。全てのがん診療連携拠点病院(がん拠点病院)には、「緩和ケアチーム」と「緩和ケア外来」があり、治療のための入院や外来通院中に、必要に応じて緩和ケアを受けることができます。がん拠点病院以外でも緩和ケアチームが設置されている病院もあります。地域では、住み慣れた自宅や入居施設で療養しながら在宅医療(訪問診療・訪問看護)を利用することで緩和ケアを受けられる「在宅緩和ケア」という方法があります。さらに、病気の状態や希望に応じて専門的な緩和ケアが提供される「ホスピス」や「緩和ケア病棟」に入院するという選択肢もあります。
- ホスピスや緩和ケア病棟へ入院するための条件には、どんなものがありますか?
-
ホスピスや緩和ケア病棟への入院の条件は、一般的に「治癒を目的とした治療が困難で、苦しみを和らげる緩和ケアを優先することを希望する進行がん患者」とされており、そこでは、がんに対する治療や延命治療は基本的に行われません。そして、本人の意向が尊重され、本人・家族の同意なしで入院することはできません。ベッド数に限りがあるため調整が必要で、入院の可否や優先順位を判定する会議が行われます。入院を希望する場合は、主治医に紹介状を書いてもらい、入院申込みの面談に(本人が行けない場合は家族に)行っていただく必要があります。それぞれの入院施設で多少の違いがあるので、面談の際に、そこでの入院の条件を確認してください。